すごく,アクセス件数と問い合わせがある内容で,何度も返答します.
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2017 年度版(アクセス解析したら,なかなかおもしろいですが,まあまあ)
*「文化学芸員」論や兼務職歴からアクセス件数が増加していますが,評価の部分を補遺しました.今後も継続します.
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私は5年前まで,滋賀県立琵琶湖博物館の学芸員でした.標記の問いには,大学に職を移しても継続的に回答しないといけないので,ブラッシュ・アップ継続回答とします.
岡山理科大学 生物地球学部 では,学部独自で学芸員の資格が認定される「野外博物館実習」も始まりました.
*以下,Q&A方式の回答ですが,定式はないので,個別の回答・相談には応じませんが,反論できる人はいないと思います.
1.どうしたら博物館の学芸員になれますか?
・琵琶湖博物館勤務時代は,「どうしたら学芸員になれるのですか?」という問いであったが,以下のように返答していた.
→「論文を書いて,研究業績を蓄積すること」に尽きる.
→研究職でない博物館はこのような返答ではないと思うが,研究することが認知されている博物館では【真実】である.
→この力は,どの職種でも活かせる.
→この力があるという意味を理解する.
→琵琶湖博物館は,学芸員=Curatorではなく,Research Scientistとしたことに,志がある.その意味は深い.
→私自身積極的に学芸員を目指したのではなく,結果としての職業選択であった.
→しかし,私は考古少年で,学芸員という職種の存在は,小学校から知っていた.
2.どうして博物館から大学に移ったのですか?
・研究者として職場を移ることは,プロの世界の常識.
→このように学生時代から思っていたし,恩師,先輩,後輩ら,さらには博物館時代の一緒に仕事をした同僚の一部の「生き方」もそうであった.
→博物館から移動しないという選択肢はなかった.研究の進展具合や,業績の蓄積具合によって職場を移すことは本人のみならず,元の職場にも寄与できる.
・移れない人には,それなり理由がある.
→私の経験をもとにした事実なので,誤解も何もないが,サッカーや野球という,プロの世界と同じ.
→日本のワークスタイルの変化という環境変化ももちろんある.
・多様な条件で,恵まれていること.
→少なくとも,先の職場(琵琶湖博物館)では,大学職員から博物館へと職場を移した人は日本の博物館にはいない,という事実が日本の博物館の実態を端的に表現している.
→私が15年間在籍した間に大学職員へ移籍した学芸員は約10人であり,日本の博物館としては異例の研究を重視し,流動性の高い博物館であったことが理解できよう(上述).逆の立場性を主張した人も個人的な経験でいたが,その実態は研究職でない立場であったことが説明されていない.
・博物館であろうが,大学であろうが研究の「らしさ」の違いはあるが,研究することは職種・職場を変えても同じである.
→したがって,研究を博物館で志向する場合,職員の業績評価がより積極的になされることが,今の博物館に強く求められ,それは結果として,専門性を高める行為につながる.
→このことは,大学という職業研究者集団の組織でも同じである.
→できないヒトは・・・です.が,(ネット時代なので科研費データベース.Web名前検索で研究業績は通知票のように明確です.なかには,本人はWikipediaに書き込んだヒトも!)
3.今後,学芸員(博物館)を目指す人へ
・研究力
→研究条件が博物館が悪いとか,労働条件云々の議論は,研究ができること(業績の蓄積)の上に成立する議論であり,継続的な研究論文が蓄積できる能力が前提である.
→研究は「超個人的行為」(by 川那部 浩哉(元 琵琶湖博物館・館長;現 琵琶湖博物館 名誉学芸員)であるが,他の多種多様な仕事と同じである.
→「超個人的行為」であることは,職業研究者としての精神的な自立が必要である.
・流動的であること
→研究はエキサイティングな世界で,「個人」の評価が問われる世界である.その個人の評価を組織として構築する必要がある.公的機関にありがちな,方便(言い訳?!)がまかり通っている場面が多いように?,というのは,言い過ぎ(過言)ではない!?.
→このような公務員としての学芸員というスタイルは,今後大きく変化することが容易に想像され,より専門性が問われる時代になることは確実である.
・趣味と博物館
→博物館は研究が必要である.
→研究は趣味ではない.仕事である.仕事である以上結果が求められることは,他の仕事と同じである.大学も同じ.
・学芸員の仕事
→上記した研究以外の仕事は「雑芸員」と称されるように多様だと反論されるが,両者を経験した私にとって,大学も多様であり,私には方便にしか聞こえない.プロである世界の緊張感がよい成果をい生むことは,職業研究者という業種に限定的な議論ではなく,「仕事」(=労働論)で説明できる.
4.今後の学芸員
・評価
→やはり,公務員制度として位置づけられていた学芸員は,評価外にあった.それは,ソトからの「個人」評価の対象でなかった,という意味においてである.
→組織としての評価が制度化されつつあるなか,次は,「個人」である.
5.文献
上記に関わるこれまでの議論は,
宮本真二(1997)博物館における自然地理学の役割.立命館地理学,9,77-81.
宮本真二(2010)博物館と地理学.地理55(10),12−19.
宮本真二(2011)インタビュー博物館の地理学者10 滋賀県立琵琶湖博物館 宮本真二さん.地理,56(9),古今書院:90-91.
にもある.