低地の開発:ベンガル・デルタと岡山平野・砺波平野(2013年9月26日)

備前で生活するようになって,まだ一年半だが,いまだ日々新鮮である.

日常の生活における新鮮さは,言葉や食生活の違いが大半である.

 

地理学的には,やはり,岡山平野という低地に,岡山市の中心部が展開していることである.

 

ベンガル・デルタは世界有数の低地で,歴史的な開発史を検討する場合,人の移動や,それに関わる技術の変容過程が重要である.しかし,日本列島における低地開発に関しての比較の視点は,備前での日常生活から考えることが出来るのではないかと,思索していた.

ベンガル・デルタの雨期は,屋敷地が水面から浮かび上がってくるような景観が特色である.しかし,この5月に訪れた砺波地方でも,下記の写真のように,「浮かび上がった家屋」の景観を目にすることができ,その開発史に思いをよせた(車窓から).

備前は,どうだろうか?

Bengal Delta, near the Dhaka, from the Plane, 9th Nov. 2011

Bengal Delta, near the Dhaka, from the Plane, 9th Nov. 2011

Tonani Plain. central Japan.  Photo by Dr. Shinji MIYAMOTO. May. 2013.

Tonani Plain. central Japan.   Photo by Dr. Shinji MIYAMOTO. May. 2013.

平地での研究発表・業績追加(2013年4月20日)

「考古学」の場で,発表します.

 

宮本真二(岡山理科大)※・内田晴夫(農研機構・近中四農研・四国研究センター)・安藤和雄(京都大・東南アジア研)・ムハマッド セリム(バングラデシュ:バングラデシュ農業大)・アバニィ クマール バガバティ(インド:ゴウハティ大)・ニッタノンダ デカ(インド:ナガオン女子大)「ベンガル・デルタにおける地形環境の変遷と民族移動に伴う土地開発史の関係性の検討」考古学研究会第59回総会(ポスター),2013年4月20-21日.岡山大学.

本研究では、低湿地における土地開発史を検討するため、世界有数の低湿地であるベンガル・デルタを対象に,地形環境の変遷と民族移動に伴う土地開発史の関係性について検討した.現段階での結論は下記の通り。

ジャムナ川中流域では、①約12-11千年前に形成された洪水氾濫堆積物(自然堤防状の微高地)を利用するかたちで、それ以降に生産域と居住域の開発が行われた。その後,②幾度かの洪水に見舞われながらも、盛土の主体部の維持管理は現金収入を生む土木作業によって、恒常的に実施されてきた。さらに、少なくとも、③約1.3千年前までには当該地域において、生産域としての水田開発と連動する形で、近隣地域に屋敷地が形成されたものと推定した。また、④この堆積物に記録された土地開発時期が、周辺地域におけるベンガル・デルタのイスラム化との関係可能性について指摘した。

 

業績の追加とバングラデシュ(2013年3月28日(修正))

ゼネスト(ホッタール)が不定期に行われていたバングラデシュから帰国した.

やはり,ベンガルは美しく,豊かであることを実感した.

 

宮本真二(2013):近江盆地東部,野洲川下流域平野における地形環境の変遷と遺跡立地.半田山地理考古,1,1-10.

Shinji Miyamato: “Geomorphological Development (Geo-environmental changes) and Human Activities in central Japan and Bengal Delta”.” International Workshop on People’s Centered Practice towards Harmonious Development in Asia”. DUS Comples, Hatiya, Bangladesh, 7th – 8th Mar. 2013.

Hatiya, Bangladesh 2013 Photo by Dr. Shinji MIYAMOTO

Hatiya, Bangladesh 2013 Photo by Dr. Shinji MIYAMOTO

E-mail:Reply and 職歴更新(2012年5月3日)

いつの間にか,今年も残すところ3分の2.

 

【海外から】

・転職関係で海外の友人・知人に連絡するためにメールを出したら,一番早いreplyはカンボジアの若い大学教員からだった.2月の民主化著しいビルマ(ミャンマー)で意気投合して,

「ぜひ,カンボジアに招待してくれ!」といった彼.元気そうでなにより.・・・というより,ヒマ!?

・次は,バングラデシュ,インド,ネパール関係者多し.

・その次は,ブータンの大学教員で,デンマークに学位取得のため滞在中との旨.さすが,という感じ.

・いま現在直近は,ドイツの地形学者が,添付ファイル付きでメール(かつて公表した論文の解釈でもめたが・・.時差もある)

・[付記]バングラデシュの知人は,日本語の出版のはじめ,日本語の案内文がでていたが,すこし不安定なので,時間があるときに小生が添削することの旨を書いた.ただし,すさまじ

き商魂魂は,感動.

・岡山の駅前で,バス停を探していたインドネシアからの留学生からもメールが届いた.これも元気そうでなにより.

 

           ・・・・・・便利だが,また,これでスパムが多くなるだろうと・・・・・・.

 

 

【国内から】

・就職,転職した方からの連絡が集中する時期で,がんばっている人はそれなりのポジションに収まってゆくことを実感.

・名刺を整理・処分していたら,日本語よりも海外の知人名刺が多く,どう整理しようかと,少し悩んだが,放置・・・・・・

 

[付記]アフリカ研究仲間友人(愛知の大学人)は,一年間使用しなかった名刺は自動処分すると豪語していたが,それは私にはできない.

いろいろ記憶が逡巡する.しかし,すぐに捨てることができる名刺などもあり,自己を照射する基準は,「今後,一緒に仕事をしたいと思える

プロかどうか」ということが判明.

 

 

【そのほか】

・webのコンテンツが充実していたが,自己のデータが旧いママで,職歴を更新した.

・灯台もと・・・という状態.

・授業資料を作っているが,過去の自費で泣きながら購入した教科書にはまる.

・査読,プレゼン,締め切る仕事各種等を再開.

学会発表(2012年4月18日)

以下の表題で学会発表を行います.

・・いろいろ詰まっています.

宮本 真二(岡山理科大・生物地球学部)※・内田 晴夫((独)農研機構・近中四農研・四国研究センター)・安藤 和雄(京都大学・東南アジア研)・ムハマッド セリム(バングラデシュ農業大・農学部)・アバニィ クマール バガバティ(ゴウハティ大・地理)・ニッタノンダ デカ(ゴウハティ大・地理)「ベンガル・デルタ中央部における約1300年前の地形環境の安定期と民族移動の関係性の検討」.第55回 歴史地理学会大会 於:新潟大学,11-13 th / May / 2012 .

毎日新聞(滋賀版):12月22日

今日の朝刊(毎日新聞(滋賀版:琵琶湖博物館と世界のフィールドからー))連載記事が掲載されましたので、校正前の原稿を貼り付けます。

 

アジア・モンスーン地域のなかでの琵琶湖

—洪水の歴史から考えるバングラデシュと琵琶湖の低地—

  宮本 真二

  初めて雨季のバングラデシュを訪れたのは、3年前の8月だった。その年は雨がとても少ないと言われていたが、飛行機から眼下に望むベンガル・デルタは一面が水で覆われていた。

私は学生時代から、現地調査のためバングラデシュやインドを何度も訪れている。その問題関心は、ヒトがいつごろ、どのような過程で、定住し始めたのかを地形や地質学的な方法で明らかにしようとするものである。冒頭のバングラデシュを調査地域に選んだのは、世界有数の低地として有名なベンガル・デルタにいつ、どのよう方法や過程で人間が定住し始めたのかを明らかにしたいと思ったからである。

バングラデシュの国土の大半はベンガル・デルタと言われる低地で、毎年の雨季には洪水氾濫が発生し、国土の多くの場所が冠水する。このように洪水が常襲するような場所に、なぜ一億を超えるヒトが居住したのかを明らかにしたいと思ったからだ。

日本に入ってくるバングラデシュの情報といえば、「貧困」や「災害」など、負のイメージを喚起するものが大半である。もちろん、負の側面としての害としての洪水も事実だが、そうでない実態も次第に明らかになってきた。例えば、洪水の歴史的な履歴と、人間の対応関係を調べてゆくにつれてベンガル・デルタに定着した人々が、洪水を「利用」してきた側面が浮かび上がってきた。毎年のように繰り返す洪水によって、水田は冠水するが、この冠水によって、肥沃な土砂がもたらされることを利用して農耕が維持されてきた事実である。また、一度の洪水によってすべての農地が被害を受けないように、水田の立地を高さによって分散させたりして、今で言うところの、リスクの分散も歴史的に行われてきたのである。

一方、琵琶湖沿岸の場合、今でこそあまり洪水の被害ということについて日常生活の中で常に意識することはない。しかし、琵琶湖とそれに関係した歴史を紐解いてゆくと、琵琶湖の沿岸地域は、洪水に頻繁に見舞われてきた事実がある。この洪水は、バングラデシュでみたように、負の側面としての洪水ではなく、琵琶湖沿岸地域の農地に水をもたらすものとしての側面も認識されてきた事実もある。つまり、琵琶湖沿岸地域は昭和の戦前まで渇水に悩まされてきたことが多い地域であり、その中にあって、時には洪水は農地に水をもたらすという利点もあったのである。

このような実態が明らかになるにつれて、私は、災「害」として強調される洪水だが、この洪水を「利用」するという側面は、バングラデシュと琵琶湖沿岸で共通する部分で、アジア・モンスーン地域を特長づける事象だと思うようになった。

バングラデシュの夕日はとても美しい。夕方、日中の調査を終えて宿に向かう最中、リキシャに乗りながら夕日を眺めていることが多い。そのような時に頭の中でよく思い浮かべるのは、同じアジア・モンスーン地域に位置する琵琶湖とその周辺地域の風景である。

私にとって、バングラデシュの調査を行うことによって、琵琶湖やその周辺の今後を考え、また逆に、琵琶湖周辺の調査からバングラデシュなど、アジア・モンスーン地域の国々の未来を思い描くことになっている。

このように、琵琶湖やその集水域といったローカルに閉じた研究ではなく、フィールドワークをもとにした海外との比較研究から、世界の中で琵琶湖を位置づける研究が求められ、同時に、研究者の力量も問われる時代になったと感じている。

執筆者紹介

宮本 真二(みやもと しんじ)

琵琶湖博物館・主任学芸員。博士(理学)。1971年兵庫県生まれ。専門は地理学・環境考古学。小学生時代は、シュリーマンにあこがれる考古少年。バングラデシュ調査ではビールが飲めないので、毎日の楽しみは、ルンギー(腰巻き)姿で、世界で一番おいしいベンガル・カレー(特に、卵入り)を手で食べること。

師走と業績補足

シュトルガート、バングラデシュ師走で、なんともあわただしい。

年末・年始仕事と、そうでないものを区別しながら作業する。

 

新聞などの連載記事について、業績を補足した。

今年度中に、あと2回ほど掲載される予定。

内容はともかく、高校生のとき、

学校の管理教育の弊害などを記述した投稿で、図書券を集めていたので、こういう文章はすぐ書ける。

 

右の写真は、バングラデシュ、ダッカのシュトルガット。ハティアへのランチから。

すごい活気!

ベンガル・デルタ

Bengal Delta, near the Dhaka, from the Plane, 9th Nov. 2011

Bengal Delta, near the Dhaka, from the Plane, 9th Nov. 2011

 バンコクからダッカへのフライト。

 とても人が少ないフライトで、しかも外の天気はとてもよく、バンコクの北部の洪水から、アラカン山脈の焼畑の景観、そして右の写真のような「ベンガル・デルタ」を機内から観察することができる、絶好の機会を得た。

 とくに、チャオプラヤとベンガルのデルタの比較すると、単純にその規模の違いに圧倒された。右の写真は、ダッカ近郊で、もう雨季は過ぎて水が引き始めている状態だが、広大な水辺エコトーンにおいて、洪水がもたらした細粒堆積物を利用したレンガの焼成場が形成されている。

 こう考えると、水に浸るということは、「利用」しがいのある場であったことを強く意識できる瞬間である。

 日本のバンコクの洪水の報道では、都市近郊の工場の害としての情報が強調されるが、当事国における水に浸かるという視角は、東南アジア、南アジアのデルタをかかえる国の特色の一つであることを、改めて認識させられた。

 ・・・というように、フィールドにでると、いろいろ考えることができるという、刺激的な日々である。今回は、時に南部の潮汐デルタ地域の土地開発史の調査を行う予定である。

バンコクからバングラデシュ:洪水の影響

バングラデシュ調査のトランジットで、バンコクに一泊した。

朝の便なので、いつものように空港近くの安宿の予定が、満室(これまで初の経験)だった。報道で、バンコクの中心部に洪水が迫るということで、観光客(少ないが)が空港周辺部にとどまった模様。周辺も宿は満室で・・・

しかたなく、中心部に向かった。

それほどの混乱はないが、土のうが目立ち、またコンビニエンスショップでは、商品がとても少なくなっている。

しかし、それほどの切迫感はない。

日本で報道されているような、鬼気迫る・・・といった状態ではない。

研究業績のリンク張り

いくつか小生の業績にかんする問い合わせがメールで来るので、PDFで公開されているものに関して、研究業績からリンクをはる作業を開始しました。

まずは、下記からで、写真などもあわせて順次作業を行います。

ただし、過去の作品は、私にとっての記憶から「忘却したい過去に」もなっており、自己の拙論に向き合う作業は、・・・・な気持ちになります

また、アナログ旧世代としては、文献は「紙で読みたい」ので、自己の意志と背反する行為でもあります。

 

宮本 真二・内田 晴夫・安藤 和雄・ムハマッド・セリム(2009)洪水の環境史—バングラデシュ中央部,ジャムナ川中流域における地形環境変遷と屋敷地の形成過程—.京都歴史災害研究,10,27-34.