研究史の「迷路」と,「喜び」

ここ数日,「地域研究の意味」にこだわって,さまざまな領域の文献研究を行っている.

・・・と,このように記述すれば,聞こえはいいが,実際は,締め切りに追われた仕事の中で,文献を読み込んでいくうちに,「はまって」しまって,つぎから,つぎへと,研究史上の迷路のなかをさまよっている,というのが実際だ.

ここでは,具体的に展開しないが,1950年代初頭という,戦後(第二次世界大戦)明けの混乱期においては,敗戦国日本の規範のなかで,学問・科学の領域の再編成が行われた時期,当日の言説はメタな議論が横行し,志を感じることができる.

これから見ると,技術は進歩・進化したが,学問は??や,いまの議論は・・・???とも感じてしまう.

数年前に自分の立場性や位置に悩んだ時期に上記の研究史に触れ,刺激を受けたが,今更ながら再度その波が覆ってきている

宮本真二(2004)フィールドからの環境史−地理学からの応答−.日下雅義編『地形環境と歴史景観−自然と人間との地理学−』,古今書院,7-21.

世代論で議論することを好まないが,自己に照射してみると,今後の研究の方向性を検討する時になっているというのを実感する.

また,科学や学問を志す「次世代」の方には,「流行(はやり)」に惑わされず,上記の時期の研究史の熱き議論に触れて欲しいとも思う.

なぜなら,もう半世紀以前の言説に,私が「共感」できること自体,学問をする「喜び」でもあるからである.

 

【閑話休題】

写真は,2005年〜2008年まで通っていた南部アフリカ,ナミビア共和国のクイセブ川中流域に分布するHomeb Silt層.

左下の木の木陰が唯一の日陰で,40度を超える砂漠の日射の中,フンコロガシと格闘しながら,ガケに挑んだ.

その成果は,

Shinji MIYAMOTO (2010) Late Pleistocene Sedimentary Environment of the “Homeb Silts”Deposit, along the middle Kuiseb River in the Namib Desert, Namibia. African Study Monograph Supplementary Issue, 40, 51−66.

構想中と,科学の厚み

また,紹介したいと思うが,恩師の一冊をここ数日熟読していたり,いまというか,次の原稿を仕込むために,勉強していおり,思考モードになっている.

 

・・とくに,謹呈いただいた一冊は,むかしからお話されていた一冊が,先生らしいまとめ方をされていたので,ちゃんと読まないといけないと思い,読み続けると,良書で,その迫力に圧倒された.

いま取り組んでいる,インド・ヒマラヤの研究でも,相当,刺激を受ける一冊.

また,別件で構想中の論文のため,これまで見向きもしなかった領域にたいして,自己での再評価モードで,その研究史にいどんでいる.

 

・・という,意味不明なブログ.

 

ただ,新しいアイデアだと,一瞬喜んだものの,似たような議論は繰り返し・・・.研究史というは,科学の厚みを再認識

 

写真は,2010年9月の,インド・ヒマラヤ(アッサム・ヒマラヤ)調査の一こコマ(石本恭子撮影).

フィールドで記載するこは大事.

 

 

若者の感性と信頼,そして「楽しむ」ワクワク感

ムスリムの世界遺産

忙しいのは変わりないが,商売も同様で,暇な時は,よろしくないだろう.

・・・と考えていて,

「研究していて,なにが楽しいですか?」

とよくは聞かれないが,地理学=フィールドを重視し,自然と人間との関係性の学,と信じているもの(かたくなにだ)のとって,説明しないといけないだろう.

思いうかぶまなに列挙しよう.

・旅が好きだ.

・ヒトの行動はおもしろい.

・「なんで,こんなものが,ここにあるの?」

・空気の違い.

・空気は生もの.

・刺激.

・ぶれない.

・発見.

・感動.

・異分野との見方の相違をフィールドで確認したり,教えてみらうおもしろさ(視点・視角の転換)

・・・・・・ほかにも,いろいろあるが,

なにより,

【あ・・・・そうか!・・・・・「わかった!!!」】という瞬間だろう.

だが,たいてい,その【わかった瞬間は】,あとで調べてみて,たいした事でない方が,大半だが,...そのスリルは,病みつきになる.

ここは,「私が見てきたのだから,事実なのだ!」

という度胸も,力量もないが,なによりも「ワクワク」「楽しむ」ことができる感受性を維持するには,フィールドしかないと,フィールド科学としての地理学を志向する立場は,そう実感している.

広義の「地域研究」へと.

【オチ】

上記の中で,楽しむというのは,いくつでてきたのでしょうか(苦笑).

もちろん,その楽しみは【享楽的な楽しみ】では,決して,ない.

写真は,バングラデシュの世界遺産.手元に野帳がないので,場所が出てこない,オヤジの仲間入り(苦笑).

ダッカにて,地域研究を考える

昨晩,ベンガル湾岸のクワカタから,10時間かけてダッカにもどり,早速,メールの確認し,日本での仕事の調整や帰国準備.(「早速」というのが,いかにも,ネットに支配されているようで,なさけない).

今回の旅は,本当に出国前は,バタバタだったが,得るものは,大きかった.以下にようやくできる.

1)地域研究のありかた.

2)コースタル研究の方向性

3)貢献の意味

1)に関しては,今回のプロジェクトの目的は,各国の研究者,地域住民,NGO,NPO関係者と「ネットワーク」構築である(下記プロジェクト).

日本という海に隔絶された国にいると,実感を伴わないが,国境を接する南アジア,東南アジアの国々では,さまざまな国の思惑が絡み,「ネットワーク」は構築されていない.

そういった現状を,災害と環境問題をキーワードに,ヒトと人の関係を構築しようというものだ.

結論からいうと,これは成功しつつあると実感した.

既存の海外研究では,海外の研究者をカウンターパートにして,情報を引き出すことを重視した海外研究がおこなわれていたが,今後はそおういったプロジェクトの動かし方は許容されないと実感した.

それは,3)に関することと関係するが,貢献の意味を再評価すべき段階にきているということだと思う.

ヒトと人のつながりは,世代を超える.

そう実感できる旅立った.

・文部科学省科学研究費補助金,基盤研究A(海外)「ベンガル湾縁辺における自然災害との共生を目指した在地ネットワーク型国際共同研究」,(研究代表者;京都大学東南アジア研究所准教授:安藤和雄)

・文部科学省科学研究費補助金,若手研究B「アジア・モンスーン地域における民族移動に伴う「土地開発史」の再検討」,(研究代表者;滋賀県立琵琶湖博物館主任学芸員:宮本真二)

2)に関しては,ベンガル低地の奥深さを実感した旅立った.

これまでも,「流域」を意識して,ヒマラヤ(ネパール,ブータン,インド北東部,アッサム,バングラデシュ,ミャンマー,ラオス)を歩いてきたが,プラマプトラ川流域を自覚できる旅立った.

抽象度を上げて表現すると「生きているプラマプトラ河」によって流域が「つながっている」ことを実感できる旅立った.

何より,バングラデシュの人々の誠実さや,陽気でプロ意識の強い,日本側研究者との議論は,忘れることができない,財産とさった.

・・・・というように,いまだ消化できないことで,【知恵熱】が続きそうである.

ダッカの安宿の早朝.